2022/3/15 12:38
帝国データバンク山形支店が原材料高騰などに関して行った県内企業の実態調査によると、回答した企業の約8割が高騰の影響を受けているとの認識を示し、このうち半数近くが「価格転嫁ができていない」とする厳しい経営実態が明らかになった。業種によって差はあるものの、不安定な国際情勢により先行きは不透明で、状況が長期化することへの懸念を抱える。同支店が事前に実施した2022年景気見通しに対する県内企業意識調査で、9割以上が「原油・素材価格の上昇」を懸念材料に挙げたことを踏まえ今回、県内272社を対象として1月に調査した。139社が回答し回収率は51.1%。
原材料不足や高騰の影響があると答えたのは82.7%。このうち価格転嫁について「全くできていない」とした企業は40.3%だった。業種別でみると、「輸送用機械・器具製造」「精密機械、医療機械・器具製造」「機械・器具卸売」などはある程度価格転嫁できていた一方で、「不動産」「自動車・同部品小売り」「運輸・倉庫」などは転嫁できていなかった。
「分からない」などの回答を除いて算出した本県の価格転嫁率は23.8%だった。全国平均よりも2ポイントほど低い数値といい、同支店は「価格転嫁に踏み切るには相手の理解を得る提案が重要になる。企業にとっては経営力が試されているような状況」と分析する。
努力重ねても補えず、やむなく値上げ―企業の声
帝国データバンク山形支店の調査結果を踏まえ、山形新聞社が複数の県内企業に原材料高騰の影響を尋ねたところ、やむなく価格転嫁にかじを切ったとする企業の声が聞かれた。ロシアによるウクライナ侵攻の影響が今後、どのように拡大するかも不安視する。
乗用車やトラック、半導体製造装置などの精密機械部品製造を手掛ける伊藤製作所(山形市)は、取引先の理解を得て材料価格の高騰に何とか対応しているとする。だが「ロシア・ウクライナ問題で予想もしない“落とし穴”が待っているかもしれない」と危惧。上林鉄工所(酒田市)も同様の状況だが、価格の急騰に応じて見積もりを算出する難しさを口にする。「納期を遅らせるわけにはいかない。この先どうなるか分からず、今のうちにしっかり材料の手配を進めなくてはならない」と話した。
食品メーカーの日東ベスト(寒河江市)は昨年暮れ以降、輸入牛豚肉を中心にした原材料や包装資材などの値上げの直撃を受けた。燃料価格の値上がりにより輸送費も高騰。経費削減などの企業努力を続けたが高騰分は補えず、やむなく商品価格を引き上げた。現段階で先行きが見通せないほか、長期化する新型コロナウイルスの影響も重くのしかかるため「一日も早く収束してほしい」と願った。
しょうゆ・みそ醸造の丸十大屋(山形市)は「値上がりしていないのは加工用米くらい」と、あらゆる分野に及ぶ価格高騰にため息を漏らす。昨年12月に今春からの商品価格値上げ(4~10%)を発表したが「予想を超え、とてもカバーできないほど原材料価格が上がっている」と話す。
原材料を供給する大手メーカーの中には、一気に3割引き上げた企業も。今後の設備投資分まで価格に反映させた大手もあったが、地方の中小企業にそんな強気の値上げはできない。容器包材全般の値上げもこれからだ。「米国のように賃金が伸びない中、販売価格を上げたら間違いなく売り上げが落ちる。アイテム数削減によるコストダウンを含め企業努力は重ねているが、どこまで上がるのか、見通すのは困難だ」と不安を口にした。
原材料高騰、県内企業8割が影響 帝国データバンク調査、価格転嫁に苦慮 - yamagata-np.jp
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