国内の財閥系化学大手3社は、2023年3月期(今期)が最終減益になるとの見通しをそろって明らかにした。原油をはじめとする原材料価格の上昇を受け、好調だった前期から一転、難しい1年になる。製品価格への転嫁によってコスト増の影響を抑えることが業績を下支えするためのポイントになるが、すでにその進捗具合には差が出つつあるようだ。
「最高益となりました」「利益を大幅に伸ばすことができました」――。5月13日に発表日が集中した国内大手化学の決算会見では、22年3月期(前期)の好調ぶりをうかがわせる言葉が相次いで聞かれた。
財閥系3社の連結決算で純利益を見ると、住友化学は前の期比3.5倍の1621億円、三井化学は1.9倍の1099億円へとそれぞれ大幅に増加。前の期に75億円の最終赤字だった三菱ケミカルホールディングス(HD)は1771億円の黒字に転じた。
各社とも石油化学事業を中心に、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ製品需要の回復に支えられた。だが、この好業績は長続きしない、というのが3社に共通する見立てだ。今期について3社はそろって減益見通しを発表した。
財閥系化学大手3社は今期そろって最終減益を見込む(写真は三菱ケミカルホールディングスが茨城県に構えるコンビナート)
減益予想の背景には、前期に収益貢献した石化事業が原料価格の高騰によって被るダメージが大きくなる点がある。前期は原料価格の上昇で石化事業における在庫評価益が拡大するというプラスの側面もあったが、今期はなくなる。同業他社の供給トラブルで一部製品の価格が上がっていた状況も落ち着く見込みだ。
石化事業におけるこうした事情は各社ともおおむね共通しているが、注目したいのは石化以外の事業だ。特に、各社が力を入れる「高機能品」を扱う事業で利益の増減見通しに差が見て取れる。原材料価格の上昇が住友化学では減益要因となる一方、三井化学と三菱ケミカルHDでは増益要因として働くというのだ。
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