新型コロナウイルス禍は社会経済を疲弊させた。物価の高騰も岐阜県民の暮らしを直撃している。有権者は国にどんな政策を求めているのか-。参院選を機に、県内の街角で耳を傾けた。
「経営はギリギリの状態。途方もない物価高に対し、国は早く手を打ってほしい」。東海道新幹線岐阜羽島駅から徒歩5分ほどの場所にある「カフェ カリス」(羽島市舟橋町)の店主の女性(66)は切実な表情で話す。
手作りパンが自慢の喫茶店。午前7時半の開店前に小麦粉などを使い、店舗でパンを焼く。モーニングサービスはくるみ、ウインナーなど4種類のパンから選択でき、毎朝常連客でにぎわう。
新型コロナウイルスの感染拡大により減少した来店客が戻りつつあったところ、原産国での不作によりコーヒー豆の価格が高騰。ロシアのウクライナ侵攻を背景にした小麦など原材料の値上がりや円安などの影響で、店は苦境に立たされている。
昨年秋、コーヒー豆や小麦などパン材料費の仕入れ値が10%上がったのを機に、毎月1回あるサービスデーの日に販売するコーヒーチケット代を100円値上げしたが、単品メニューの価格は据え置いたままだ。
今年4月以降、コーヒー豆、小麦はさらに高騰、おしぼりや卵なども7~10%値上がりした。女性は「昨年秋にチケット代を上げたばかりで、また値上げすることはできない。お客さんの顔を見ると、値上げははばかられる。今は我慢するしかない」と吐露する。パンのくるみの量を減らしたほか、少しでも安く手に入れるためウインナーの仕入れ先を変えるなど工夫してしのいでいる。
新型コロナの給付金にはばらまきではないのか、本当に必要な対象者に行き届いたのか―と疑問を抱いてきた。「コロナ禍に続く原材料の値上げで飲食店は大変な状況が続いている。国は真に必要なところを支援してほしい」と女性は願う。
今月からランチメニューを値上げした羽島郡笠松町の喫茶店経営者は「食用油は2倍近くに上がっており、材料費は何もかも高騰。本当はもう少し上げたかった」とため息を漏らす。
店内で焙煎するコーヒーの生豆を仕入れている羽島市の喫茶店では、生豆の仕入れ値が昨年の2倍ほどに上がった。光熱費の値上げもあって今年1月にコーヒーを含むドリンクメニューの価格を1割強上げたが、50代の男性店主は「このままでは立ち行かない」とさらなる値上げを検討する。
県内では、喫茶店を含む飲食店の数が年々減っている。コロナ禍に加え、経営者の高齢化や物価高が背景にあるといい、県喫茶飲食生活衛生同業組合の牧野義春副理事長は「先行きが不安。この状況が続けば、さらに店を閉めざるを得ないところが多く出てくるのでは」と危惧する。
羽島市の喫茶店の男性店主は「国には、不測の事態への影響を最小限に食い止めることができる強力な経済政策を求めたい。疲弊した国内の経済を抜本的に立て直し、活性化させることが急務だ」と訴えた。
喫茶店「経営ぎりぎり」先行き不安 原材料高騰、飲食店数は年々減少 - 岐阜新聞
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