大同特殊鋼の2023年3月期連結決算は最終利益が前期比35%増の364億円となり、過去最高益を更新しました。原材料価格が高騰する中でも、しっかりと利益を上げられるようになりました。
大きな要因は二つあります。いずれも単年度の話ではなく、ずっと継続してきた取り組みです。
一つ目は、付加価値のある高機能材の比率が増えたことです。ポートフォリオ(構成)改革の成果が出始めたと言えます。
特殊鋼は一般の人にはなじみが薄いかもしれません。鉄を白米だとすると、特殊鋼はチャーハンのイメージです。色々な具材を混ぜて、いためて、味付けをしていくように、鉄に合金元素を添加したり、熱処理をしたりして、新たな機能を付与しています。その中でも、より腐食しにくい、熱に強いといった価値のある高機能材の構成が増え、収益性が高まりました。
もう一つの要因は、原材料や燃料の価格変動による影響を抑え、適正なマージンを確保できるようになったことです。
原材料については10年以上前から、エネルギーについては2年前から、価格変動を販売する価格に連動させるサーチャージ制を導入しました。営業担当者が顧客と丁寧に話し、理解をいただきながら広めていった結果、物価高の影響をヘッジすることができました。
<主要な取引先の自動車業界では、急速に電動化が進んでいる>
特殊鋼業界は需要構造が大きく変わる転換点に来ていると思います。エンジンや変速機向けの鋼材は減っていくでしょう。電気自動車(EV)のモーターや自動運転のセンサーに使われる材料といった新たな需要にしっかりと対応していくことがミッション(使命)だと考えています。
クルマの電動化では、磁性のある材料など高機能材が求められます。2020年に岐阜県に中津川先進磁性材料開発センターを開設するなど、研究開発の体制を強化しています。
トヨタ自動車はEVの世界販売を26年までに年150万台とする基準を示しました。こうしたスケジュールが出ることで、素材メーカーとしてどう変化していけばいいかをしっかり考えられる。逆算して、具体的な計画を立てていきます。
脱炭素化の流れで、自動車向け以外でも新たな需要が伸びています。
例えば、船舶用のエンジンでも環境規制が厳しくなっています。より高温で燃焼すれば無駄なく燃料を使えることから、熱に強い材料の需要が好調です。
<自社の脱炭素の取り組みはどうする>
我々は、電気で鉄スクラップを溶かして鋼材の原料を作る「電炉」メーカーです。事業活動で排出する二酸化炭素(CO2)のうち、3分の2程度は電力由来です。電力会社からCO2フリー(排出ゼロ)電力を購入することでこれを削減していきます。
残りの3分の1は、歩留まり率の向上といった効率的な生産活動で減らしていきます。電気炉を回転させ、鉄スクラップが溶けやすいようにする技術なども活用します。
30年にCO2排出量を13年比で50%削減し、50年にカーボンニュートラル(脱炭素化)を達成することを目指しています。実現に向け、計画的に自助努力を積み重ねていきます。(聞き手・山内竜介)
しみず・てつや 1962年生まれ。85年、名大工卒、入社。2020年取締役、22年4月副社長、今年6月27日に社長就任。趣味は料理、座右の銘は「虚心
大同特殊鋼 名古屋市東区に本社を置く世界最大級の特殊鋼専業メーカー。1916年、名古屋電燈会社(現・中部電力)から製鋼部門を分離して設立された「電気製鋼所」がルーツ。76年に3社合併により現在の社名となった。超強力な「ネオジム磁石」を開発した佐川真人氏が顧問を務めている。
原材料高でも最高益要因は? 高機能材へ移行成果 - 読売新聞オンライン
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