国内ビール大手3社の2023年1〜9月期の連結決算(国際会計基準)が10日出そろった。本業のもうけを示す事業利益は3社とも増加した。国内では猛暑や経済再開に伴い業務用ビールが回復。家庭用でも値上げが浸透し原材料高の影響を補った。10月にはビールが減税になり、各社は新商品を投入して需要を喚起する。
10日に発表したアサヒグループホールディングス(GHD)の23年1〜9月期決算は、売上高にあたる売上収益が9%増の2兆230億円、事業利益が13%増の1996億円と、ともに過去最高を更新した。売上収益は同期間で初めて2兆円を超えた。
業績のけん引役となったのは国内の酒類事業だ。同事業の売上収益は1%増にとどまったものの、事業利益は22%増えた。全体の事業利益の増加額の6割を占めた。
ビール類の単価(酒税抜き)は22年10月の値上げが寄与し9.5%上昇した。原材料高の影響を値上げで補っている。家庭用は外で飲む機会が増えたことで11%減ったが、業務用は猛暑の影響もあり20%増えた。
サッポロホールディングス(HD)も10日に決算を発表した。売上収益は9%増の3777億円、事業利益は2.5倍の143億円だった。外食が強いサッポロビールの国内酒類事業は事業利益が約2.2倍になった。主力の「黒ラベル」の販売数量は6%伸びた。
キリンホールディングス(HD)は売上収益が6%増の1兆5478億円、事業利益が5%増の1415億円だった。国内酒類のキリンビール単体では1%増収だった。ビールや発泡酒などの業務用ビール類の販売数量が2割増えた。
海外事業も業績を下支えした。アサヒはラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会の最高位スポンサーになった効果もあり、「スーパードライ」の海外での販売数量が37%増えた。円安は事業利益ベースで75億円の増益要因となった。キリンは米国の飲料会社コーク・ノースイーストで値上げが浸透し、19%の増収となった。
ビール以外で稼ぐ力も伸ばしつつある。キリンは事業利益の4割強を医薬で稼ぐ。8月にはオーストラリアの健康食品最大手ブラックモアズの買収手続きが完了し、独自素材「プラズマ乳酸菌」などアジア・オセアニアでの販路拡大を見込む。
原材料高の影響は今後も続く見通しだ。アサヒGHDは23年12月期通期で約1000億円、キリンHDは約450億〜480億円、サッポロHDは140億円の減益要因になる見通し。
キリンは値上げやコスト削減が740億〜770億円、サッポロも245億円の増益要因になるとみており、原材料高の影響を打ち消している。アサヒも国内の酒類・飲料で見込んでいる約400億円の原材料高を値上げで吸収できるという。
23年12月期の業績予想はサッポロのみ上方修正した。業務用需要の回復が続くとみて売上収益は前期比7%増の5100億円、事業利益は77%増の165億円と、従来予想をそれぞれ200億円、30億円上回る。
10月の酒税改正でビールは減税になった。増税となった第三のビールなどから一定の需要が流れるとみて、サントリーも含めた大手4社は10月に缶ビールで9つの新商品を発売した。アサヒビールが投入したアルコール度数が3.5%の「スーパードライ ドライクリスタル」は発売1週間で販売数量が100万ケース(1ケース大瓶20本換算)を超えた。
ビールの10月の販売数量は4社合計で前年同月比約6割増えたもようだ。ビール類全体の約2割増を上回る。スーパードライは48%増、黒ラベルは55%増と主力商品が伸びた。
ただ、23年通年ではビール類の販売数量は2%程度減る見込み。外食では二軒目需要の消失など新型コロナウイルス下でのライフスタイルの変化が尾を引く。今後は人出の回復を追い風に忘年会需要などを取り込めるかがカギになる。(八木悠介)
ビール3社、値上げ浸透で事業増益 1〜9月原材料高補う - 日本経済新聞
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