自動車部品メーカーの業績回復が鮮明になっている。トヨタ自動車グループの主要8社が発表した2023年9月中間連結決算で、最終利益は全社が増益、6社が過去最高だった。原材料価格の高騰分を取引先に価格転嫁したことなどが影響しており、今後は持続的な成長につなげられるかが焦点となる。(佐藤一輝)
■事業環境が改善
昨年の9月中間期の最終利益は、5社が減益だった。鋼材やアルミニウムといった原材料価格の値上がりが負担になっていたが、今年は大幅に軽減した。
アイシンは昨年、原材料費などの高騰が、営業利益ベースで650億円分、業績を押し下げ、5割近い減益を計上した。だが今年は、原材料価格高騰分の価格転嫁が進み、最終利益は2倍以上の増益となった。伊藤慎太郎副社長は「事業環境の改善が進んだ」と総括した。
トヨタ紡織と愛知製鋼は、最終利益が前年同期の10倍以上になった。愛知製鋼の後藤尚英社長は、「購入品の価格上昇に、(価格転嫁が)おおむね追いつくことができた」と話した。トヨタ紡織は、採算性の高い高級車種向けの製品の比率が上がったことも奏功した。
■円安で海外収益増
主要取引先のトヨタは、今年度上半期の世界生産台数が前年同期比12・8%増の505万8248台と、上半期として過去最高を更新した。世界的な半導体不足の緩和が部品メーカー各社の業績にも追い風となっており、売上高は全8社が過去最高だった。
豊田自動織機は、エンジンの販売台数が26・6%、カーエアコン用コンプレッサーが5・1%、それぞれ増加した。ジェイテクトも、ハンドル操作に使われるステアリングの販売額が14・4%伸びた。
円安により、海外での稼ぎを円換算した金額も膨らんだ。デンソーは基準となる為替レートが1ドル=141円と、前年同期より7円円安で推移し、営業利益ベースで95億円の増益効果があった。豊田合成も円安が営業利益を16億円分、押し上げた。
■中国市場に懸念
24年3月期の業績予想は、全社が最終利益を引き上げた。デンソーや豊田自動織機など5社は、過去最高を更新する見通しだ。
自動車メーカーの生産について、デンソーの松井靖副社長は「24年1~3月は計画から1割程度の下振れを見込んでいる」と述べるなど、各社は保守的な見積もりを示す。生産が計画通りに進めば、業績のさらなる拡大も期待される。
懸念は中国市場の動向だ。急速な電気自動車(EV)の普及で現地メーカーが台頭する一方、経済の減速で自動車の販売減も懸念されている。
豊田合成の斎藤克己社長は、中国ではEV向けの開発を強化しつつ、生産台数の落ち込みも勘案する必要があるとして、「アクセルとブレーキを両方踏みながら経営をしていく
豊田通商が発表した2023年9月中間連結決算は、売上高が4・6%増の5兆1352億円、営業利益が12・1%増の2331億円、最終利益が17・5%増の1777億円だった。
自動車の生産回復に伴い、中央アジアやアフリカでの自動車販売事業が好調だった。自動車向けの電子部品などの引き合いも増えた。
貸谷伊知郎社長は「収益を再生可能エネルギーや水素といった強みを生かせる分野への投資に回し、さらなる成長につなげたい」と話した。
24年3月期の業績予想も上方修正した。営業利益は7月時点の見通しより100億円多い4400億円(前期比13・2%増)、最終利益は200億円多い3200億円(同12・6%増)とした。
トヨタ系6社最高益 9月中間 原材料高価格転嫁進む - 読売新聞オンライン
Read More
No comments:
Post a Comment