海外からの原材料供給が事実上停止していることを受け、吹付ウレタン断熱工事に遅れが出始めている。ビルやマンションの壁面断熱材として主流となっている吹付ウレタンは代替がきかない製品だけに、後工程や建築物の完成、引き渡し時期への影響も懸念される。具体的な打開策を見いだせない中で、日を追うごとに事態は深刻化しており、関係者は頭を悩ませている。 吹付ウレタンの原液は、ポリイソシアネート、ポリオールの2成分で構成され、そのうちのポリオール成分にはポリオールのほか、発泡剤、整泡剤、触媒、難燃剤などを混合する。
実際の断熱工事では、ドラム缶に入った、この2成分を専用の吹付発泡機で混合調整し、吹付ガンから硬質ウレタンフォームを成形して施工する。断熱材としての吹付ウレタンは施工性や品質の高さからビル、マンションの壁面の9割以上で使用されている。
ただ、ノンフロンの発泡剤「HFO(ハイドロフルオロオレフィン)」の製造元で、世界的なシェアを誇る米国・ハネウェルの工場がことし8、9月にかけて発生したハリケーンの被害を受けたため、同社は「注文どおりに納入できない」「当事者(自社)には責任なし」「いつ再開できるかは不明」を意味し、需給間交渉すらできないフォースマジュール宣言を発出。現在も継続しており、本格稼働(宣言解除)の見通しはたっていない。
他国に置く生産ライン(工場)を含め、メインの供給先が欧州であることも重なり、日本への供給量は宣言前と比べて3-4割落ち込んでいる。
他の発泡剤として「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」が存在するものの、温室効果が高く、フロン排出抑制法のフロン類に該当することから代用は難しく、HFOに頼らざるを得ないのが実情だ。
さらに、原液の主原料であるイソシアネートは世界的な資材不足を受けて品薄状態。中国からの輸入に依存する難燃剤についても同国の電力不足で多くの生産設備が停止しており、入手が困難になっている。
トリプルパンチとも言える状況がこれまで表面化してこなかった背景には、吹付ウレタン断熱工事が建築工事全体の工程上、11月から翌年1月に集中することにある。繁忙期の到来によって、硬質ウレタンフォームの原液不足に起因した断熱工事の遅れが全国各地の現場で生じている。
吹付硬質ウレタンフォーム工事業者でつくる日本ウレタン断熱協会(丸山和久会長)の橘谷幸夫専務理事は、窮状を打開する対応策が存在しない状況に「会員は悲鳴を上げている」と訴える。
当然ながら、断熱工事が終わらなければ先の工程には進めないため、同協会の大川栄二顧問は「後工程、ひいては物件そのものの工期への影響が現実味を増している」と危惧(きぐ)する。
ウレ断協では元請団体などに対して現状を説明し、理解を求めていく方針だ。
原材料不足で遅れ深刻/打開策なく工期への影響危惧/吹付ウレタン断熱工事 - 日刊建設通信新聞
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