新型コロナ禍の影響などによる生産財の世界的な需給の変化で、食料品の原材料費の高騰が続く中、あきる野市に今年一年間、メニューの価格据え置きを決めたそば店がある。「そば処(どころ) 花がき」(二宮)。店主の市川大五さん(46)は転職後に苦労を重ねて店を守ってきた。客足が戻りきらない中での身を切る決断の背景には「お客さんのおかげで味を向上させられた」との感謝の思いがある。(布施谷航)
花がきは今は亡き先代で、市川さんの義父が一九八三年、五日市街道沿いに開業。秋川渓谷を訪れる観光客らの人気を集めた。市川さんは六年前、義父が体調を崩したことから後を継ごうと建設業から転職。義父の元でそば打ちを始めた。背中で教えてくれたその先代は二年後に死去。その後は寝る間も惜しんで努力し、「先代よりおいしい」と常連客に認められるまでになっていた。そこにコロナ禍と原材料の高騰が襲った。
てんぷら油や小麦、そば粉など輸入原材料はことごとく価格が上昇。市川さんは「値上がりしていないのは国産野菜ぐらい」とため息をつく。一時は一品五十〜百円の値上げを検討したが、今月上旬に「一年間は値上げしない」と決めた。「みんながつらい思いをしている中、足を運んでくれる人を応援したい」
昨年四月には、「ミニうな重セット」(千四百三十円)などを五百円で提供する二週間限定のキャンペーンもうった。緊急事態宣言下で受け取った国の協力金を値下げ分に充てた。当時も経営は厳しかったが「うちの味を知って通ってくれるようになったお客さんもいる」と、手応えも感じられた。それが今回の原動力にもなっている。
先代のモットーは「家族でおなかいっぱいになって笑顔になってほしい」。コロナ禍でも思いを受け継ぎ、お客さんに笑顔を届けることが市川さんの目標だ。
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