日本銀行が3日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス1と前回の昨年12月調査のプラス7から悪化した。原材料高や欧米の急速な利上げに伴う海外経済の減速などの影響が背景にあり、悪化は5期連続となる。
業種別に見ると、部材供給不足の影響が緩和している自動車や、造船・重機が改善した一方で、電気機械やはん用機械、石油・石炭製品などが悪化した。
大企業・非製造業の業況判断DIはプラス20と前回のプラス19から上昇した。改善は4期連続。新型コロナウイルス感染症による影響が落ち着いた中で、インバウンド(訪日外国人)需要の回復もあり、小売りや対個人サービスなどの改善が続いた。
先行きについては、大企業・製造業がプラス3に改善を予想している。同・非製造業はプラス15へ悪化を見込んでいる。
事業計画は総じてしっかり。2023年度の設備投資計画は全規模・全産業で前年比3.9%増と、3月調査における翌年度の見通しとしては過去最高となった。強めに推移した22年度計画が過去平均よりも大きめの下方修正となっており、一定規模の投資案件が23年度に先送りされた可能性がある。
9日に就任する植田和男新総裁は、27、28日に開かれる金融政策決定会合に初めて臨む。欧米発の金融不安も相まって足元で世界的な景気後退のリスクが高まる中、金融政策運営は現在の大規模な金融緩和策の効果と副作用を入念に点検しつつ、慎重な判断を迫られる可能性が大きい。
キーポイント
- 景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いたDIは大企業・製造業がプラス1と前回調査から6ポイント悪化ーブルームバーグ調査の予想はプラス3
- 非製造業はプラス20と1ポイント改善-予想はプラス20
- 先行きは製造業がプラス3と改善、非製造業はプラス15と悪化を見込む
- 23年度の為替想定は1ドル=131円72銭、1ユーロ=138円29銭に設定
- 備考:予想は3日午前8時時点
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、製造業DIの予想を上回る悪化について「グローバルな製造循環の影響が大きい。製造業サイクルはアメリカも欧州もアジアも全部下に向かっているので、日本でも悪化した」と指摘。非製造業は「シンプルにウィズコロナが効いている」とした上で、インバウンドも増えており、消費関連が基本的には全部良くなってきていると総括している。
三菱総合研究所の堂本健太研究員は、自動車は先行き景況感の改善が見込まれているほか、企業が中長期的に設備投資を行うことも確認できたとし、「先行きについて期待できる部分も大きい」と指摘。日銀の金融政策運営に関しては「拙速に政策修正を行うというより、政策修正ができるような経済状況が整っているかを引き続きデータを見て確認していく」とみている。
企業が想定する消費者物価(CPI)は平均で1年後が前年比2.8%上昇となり、前回調査の2.7%上昇から上振れした。3年後の2.3%上昇、5年後の2.1%上昇とともに、調査を開始した14年以降で最高。
詳細(日銀の説明)
- 回収基準日は3月13日、それまでに7割弱を回収。米欧の金融不安の影響は、今回の短観の結果にほとんど反映されていない可能性
- 業況判断は製造業が原材料高やエネルギーコスト高に加え、海外経済の減速や半導体需要の減退などで幅広い業種で悪化した
- 非製造業は原材料高やエネルギーコスト高が重しとなる中、感染症の影響の緩和や観光支援策が寄与して改善した
- 販売価格判断DIと仕入価格判断DIは、大企業製造業ではいずれも11期ぶりに下落方向の動きとなった。大企業・非製造業の仕入価格判断DIも11期ぶりに下落方向。DIが高水準にある中で、輸入価格がひと頃よりもピークアウトしたことが関係している可能性
- 雇用人員判断DIは不足超幅がかなり大きいところに来ている。大企業・非製造業はマイナス33となり、コロナ前のボトムのマイナス31を超えた
(第5段落に詳細を追加して更新しました)
大企業製造業の景況感はプラス1に悪化-日銀短観 - ブルームバーグ
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