金属や原油、木材など原材料の世界的な価格高騰が静岡県内産業に影を落としている。新型コロナウイルス禍から世界経済が急回復した影響のほか、国際情勢も複雑に絡む。高止まりする原材料費は中小企業の収益を圧迫し、「コロナ禍で業績が苦しい中、これ以上は耐えられない」と悲鳴が漏れる。
「材料のストックがある現在は何とかなっている。でも、この先の仕入れを考えると頭が痛い」と嘆くのは、富士宮市のマグネシウム合金加工会社マクルウの安倍信貴常務(49)。軽量のマグネシウムの特性を生かし、高齢者向けのつえや椅子などを製造・販売する同社にとって、死活問題という。
マグネシウム相場は今春まで1トン当たり2200~2500ドル(1ドル114円換算で約25万~28万5千円)だったのに対し、9月には一時1万5千ドル(約170万円)に跳ね上がった。背景にあるのは世界シェアの9割近くを占める中国の動向。製錬の際に使用する石炭電力は二酸化炭素の排出量を増大させるとして、中国政府が生産停止を命じ、混乱が広がった。
原材料価格の高騰は半導体や原油、木材などでも相次ぎ、幅広い業種で影響が出そうだ。
静岡経済研究所は8月、448社を対象に調査を実施し、原材料価格の高騰が県内企業の8~12月の収益を前年同期比6・4%引き下げると試算した。業種別では電気機器(マイナス17・6%)や運輸・物流(マイナス17・4%)などが目立つが、卸売や宿泊・飲食などの非製造業を含めた全業種で悪化が見込まれる。
同研究所の川島康明研究部長は「欧米や中国などで一斉に経済活動が再開されたことで、あらゆる原材料の供給が需要に追い付かなくなっている。米中の覇権争いなど各国の思惑や政情も重なり、事態を複雑化させている」と指摘。「価格が正常化するまでに1年以上かかる可能性が大きい。企業が価格転嫁せざるを得なくなれば、家計にも影響が直撃する」と予測する。
マグネシウム価格一時6倍…原材料高騰 静岡県内企業に追い打ち|あなたの静岡新聞 - @S[アットエス] by 静岡新聞
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