「小さなネジの、大きな夢」
NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」で登場する工場に貼ってあるポスターの言葉だ。生産したねじ山の後ろに、真っ青な空を一筋の飛行機雲がたなびく写真が背景になっている。志半ばで亡くなった父の夢をかなえようとする女性の奮闘を描いている。父は、リーマン・ショックの影響で取引を打ち切られ、債務返済のために人員整理が求められる中、心労もあって工場で倒れて、そのまま亡くなった。会社を引き継いだ母と二人三脚で経営を立て直す朝ドラの展開にすっかり引き込まれてしまった。
東京商工リサーチによると、リーマン・ショックのあった2008年と09年の全国企業倒産件数は、ともに1万5000件を超えている。22年は6428件なので、規模の大きさがわかる。米国の住宅ローン問題をきっかけにした金融機関の破綻は、世界の経済危機に発展した。
どん底にあった経済が回復しつつあった時期に、埼玉県で中小企業を取材した。
さいたま市にあるめっきの会社、日本
会社は、父親が亡くなった後に一貫性のない設備投資を続けて赤字を垂れ流し、資産の切り売りでしのいでいた。そんな状態に、引き継いでくれる経営者はいない。従業員の家族を守るには、自分がやるしかないと考え、00年に32歳で社長に就任した。
道のりは平たんではなかった。融資を受けようとした銀行では、「本物の社長を連れてきてください」と言われ、屈辱的な思いをした。年上の男性社員には、医療器具メーカーからの依頼が「難しくてできない」と断られた。
負けず嫌いの性格がばねとなった。展示会では自ら営業し、社員と力を合わせて実績を上げていった。苦しくても士気に関わる人員削減はしない。3年後に黒字化させる目標を立て、達成した。時計めっきが中心だった業務を広げ、今は「多品種少量受注」が強みになっている。
規模の小さい企業を取り巻く環境は厳しい。日本政策金融公庫が昨年12月に発表した23年の中小企業景況見通しによると、「原材料価格、燃料コストの高騰」に不安を持っていると回答したのは80%と、前年より約13ポイント増えた。為替の変動や金利上昇も逆風になる。
上がる原材料費と金利、立ち向かう中小企業…経営者の情熱にエールを - 読売新聞オンライン
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